いじめ
「いじめ」
もらってしまえばこっちのもの、なんとかなる、なんてタカをくくっていたのだ。絶対説得してみせるって意気込んでいた。
でも、どないしても、なんともならんかった。
「せやから言ったでしょ。ほんまに大丈夫なんかって? こんなことに
なると思ったわ」
その子の家の玄関でその子のお母さんがその子に向かって責め立てるような感じでそう言い放っていた。
ちょっと越路吹雪に似たその子のお母さんの、眉間にシワをよせてきつく眉をしかめた顔は、こんなに時が経った今でもいともすんなり思い出すことができる。
クラスの子に冷たい目で見られて同然のことをしてしまったのだから仕方がないと私はその無視に耐えた。
でも、一番仲のよいお友だちにまで口をきいてもらえなくなったのは、さすがにこたえた。
もっと複雑な込み入ったことがいろいろあったけど
話すと延々と長くなるのでこのへんで。
なんで一週間で元に戻ったのかというと、
ありのままの事情を話し、全てをさらけ出してその子にあやまってわかってもらえたからだと思う。
あの時の私は、たしかに子どもながら、命をかけて全身で申し訳なかったということを表現したように思う。
もしかしたら、それはかなり演技もはいっていたかもしれない。
それから社会人になるまで、ずっと私は「いじめ」とは無縁の世界で過ごすことができた。というより、「いじめ」という言葉を存在を、全く意識することなくずっと過ごしていた。
私が、本格的に陰湿ないじめを経験したのは、社会人になってからだった。
しかも陰湿ないじめを受けたのは、同じ職場の大の男たちからだ。